年を取るに従って、唇は薄くなってきます。口唇が薄くなる原因には、口唇の脂肪や筋肉が加齢変化で萎縮することが挙げられますが、それ以外にも歯や歯肉の萎縮・口唇の表情筋の緩みが関与しています。
口唇の厚みにとって歯のポジションは非常に大切です。わかりやすい例を挙げますと、入れ歯をしているお年寄りが入れ歯をはずすと、口唇がまくれ込んで薄くなります。入れ歯をはめると、唇が押し出されてきますので厚く見えます。つまり、歯が後退したり、歯肉がやせたりすると唇は薄くなります。反対に歯が出ている(出っ歯)と唇は厚くなります。出っ歯の修正術、特に上顎前突の修正術の術後に口元が老けてしまったと悩んでいらっしゃる患者様は少なくありません。それは、前歯が後ろに下がって口元が引っ込んだと同時に、口唇が薄くなったためです。
また、加齢によって口唇の表情筋の緊張が緩んでくると、上口唇がだらりと下がり、口角も下がります。だらり伸びることによって口唇は薄くなります。
薄い口唇を厚くする口唇拡大術は西洋人にとってはポピュラーな治療法です。ハリウッドスターが突然厚い唇になってスクリーンやテレビに登場してくるのはよく知られています。西洋人は、日本人に比べて歯が後退している人が多いため、口唇が薄くなり安い傾向があるからです。
さて、薄い唇をふっくらさせる口唇拡大術には注入法と皮弁法があります。
注入する材料としては、吸収性注入素材(ヒアルロン酸)注射が安全で効果も確実です。ヒアルロン酸は体内で分解されて最後には吸収されてしまいますので、どうしても効果が永久というわけにはいきませんが、吸収されないアクアジェルやハイドロジェルは10年、20年後にどのよう右な後遺症が発生してくるか分かりません。最近では、持続時間が長くなった新しいヒアルロン酸が開発されています。今後、さらに効果の持続が期待できます。
吸収性注入材料に替わる注入物としては患者様ご自身の脂肪を採取して注入する脂肪注入法があります。注入された脂肪細胞が全て生き残るわけではありません。生着率が一定しないのがこの治療法の欠点です。しかし、脂肪細胞が生着すれば、効果は一生持続します。
皮弁法というのは口唇の裏側に切開を加えて、口の中に隠れている粘膜を外に引き出してくる手術法です。この術式は、口唇のボリュームを太らせるというよりも、口唇を外に向かってそり出した形にする効果が大きいといえます。
そのほか、口角挙上術や上口唇短縮術にも口唇を厚く見せる効果があります。